リノベーションって本当はどういう意味?今更聞けないリフォームとの違い

今回はリノベーションについて、プロの目線で少し掘り下げてお話したいと思います。

巷ではまだリフォームとリノベーションという言葉が混同して使われているようですが、両者の違いを正確に説明できる人は少ないんではないでしょうか?

 

分かりやすい例をあげると、2002年からテレビ朝日系列で放映されている『大改造!!劇的ビフォーアフター』という有名な番組がありますよね。

あの番組は「家族の問題を『リフォーム』で解決しませんか?」というのがコンセプトらしいのですが…

あれって、私から言わせると完全に『リノベーション』なのですよ。

 

まぁ、興味のない方にとっては正直どちらでもよい話なんでしょうけど、一応リフォーム・リノベーションって、それぞれ明確に定義されているわけです。

  • リノベーションて本当はどういう意味?
  • 今更聞けないリフォームとの違いって何?

というテーマで進めていきたいと思います。

リノベーションとは?リフォームとの違いは何?

よく混同されやすいリノベーションとリフォームですが、どんな違いがあるのか説明していきます。

リノベーションとは

リノベーションとは、既存(中古)建築物の機能を変更し性能を向上させるなど付加価値を与える改修工事のことをいいます。

既存建築物は住宅に限らず、店舗や事務所、ホテル、病院などあらゆる用途の建築を含みます。

例えば、以下のように付加価値をUPさせる改修工事は全てリノベーションに分類されます。

  • ライフスタイルの変化に合わせた間取りの変更
  • 内窓設置、断熱材の追加により断熱性を向上
  • 太陽光発電設備の増設、オール電化による省エネ化

 

冒頭にも述べましたが、テレビ朝日系列で放映『大改造!!劇的ビフォーアフター』で紹介されるリフォームは、ライフスタイルの変化に対応し新しい価値を加える改修なので、厳密にはリノベーションですね。

建物の構造部分(木造、RC造など)だけを残し、内装部分・住宅設備を解体することをスケルトンにするといいます。

そして、一旦スケルトンにしてから新たに間取り設計をして内装を建築する工事を「フルリノベーション」と呼んでいるのです。

略して「フルリノベ」といったりします。

 

リノベーションは元々アメリカが発祥と言われていますが、地震の少ない欧米では昔から一般的に行われてきたものなんですね。

自分たちで内装を撤去して、新しくレンガを積んだり壁を塗装したり、自分たちのライフスタイルの変化に応じて中古建築を改修していくのは、日常的にやっていることだったりします。

 

英語にもrenovation(革新・刷新・修復)というワードがあり、リノベーションの語源であるというのが通説なのですが…

リノベーションが流行り始めた当初は、リフォームとイノベーションを組み合わせた造語だという認識が主流でした。

ちなみに、

  • 事務所ビル→ホテル
  • 倉庫→賃貸住宅
  • 店舗→保育施設

などの用途変更を伴う改修工事はコンバージョンと呼ばれ、同じ付加価値を与える改修工事の中でも使い分けています。

リフォームとは

リフォームは、既存(中古)建築物の機能を新築時の状態に回復する改修工事のことを示します。

賃貸住宅において、退去後に入居時の状態に戻す工事を原状回復工事といいますが、リフォームと同じ意味ですね。

例えば、以下のような更新は全てリフォームに分類されます。

  • クロスや床の貼替え
  • キッチン、洗面化粧台、トイレ、ユニットバスなどの住設機器を更新
  • 畳やふすまの交換

ところが、「リフォーム済物件」よりは「リノベーション済物件」と謳った方がオシャレで聞こえもよいためか、近年ではリノベーションというワードを使われやすい傾向にあります。

まぁ実際のところ、クロスや床、住設機器も年々性能が向上していますし、少しでも付加価値が加わっていれば広義ではリノベーションといってよいでしょう。

 

参考までに、既存建築の外装を修繕し新築時の状態に回復する工事は、大規模修繕工事といいます。

街中でよく見かける、マンションなどの外周に足場を組み立ててグレーや黒色のシートで囲い、入居者が住みながら行っている工事のことですね。

いろんな言葉があってややこしいですけど、厳密にいうと以上のように全て明確に定義されているのです。

リノベーションのメリット・デメリット

リノベーションとリフォームの違いが分かったところで、リノベーションにはどんなメリットやデメリットがあるのかお伝えしていきます。

リノベーションのメリット

まずはじめに、リノベーションのメリットについてみていきましょう。

物件の選択肢が多い

中古物件は新築に比べて物件数も多く、自分が希望するエリアや広さなど条件にマッチしたものが見つかりやすいというメリットがあります。

フルリノベーションするのであれば、間取りや内装・住宅設備の良し悪しは関係ありません。

内装や設備が古くて売れ残っているような物件も選択肢に含めることができるというわけです。

駅近で好アクセス好立地の条件でも選択肢が増えるのは、かなりの魅力ですね。

新築より低価格で購入できる

同じ立地条件、同じ面積・間取りで比較すると新築物件よりは確実に低価格で手にすることができるのも大きなメリットです。

フルスケルトンにして内装及び設備配管(マンションの場合、共用竪管は除く)、電気配線など全て更新してしまえば、躯体(骨組み)が古いことを除き、生活する上ではほぼ新築と変わることはありません。

また、築15年以上の物件であれば価格も安定期に入っており、新築に比べて価格が急落するリスクも小さいのです。

その他の安心ポイント

新築物件は何もかも全て新品なので、当然ながら全てが綺麗に見えます。

仮に隠蔽部で重大な欠陥があったとしても、プロでさえ見抜くことは困難です。

しかし、施工ミスや手抜き工事で仕上げられたものは必ず何らかの不具合の症状が現れます。

例えば、横浜市内で販売されたマンションにおいて、杭工事において支持層に到達していないのにデータ改ざんが行われ、後にマンションが傾くという前代未聞の事例は記憶に新しいのではないでしょうか。

大手企業が関わる大型マンションだったため、当時非常に大きな問題として話題を集めましたが、戸建住宅でも同様の事例は珍しくないわけです。

どんな建物でも経年劣化はありますので、適宜修繕をしていきながら維持保全をしていきます。

良好な状態を保っている中古物件というのは、それだけで安心できるポイントになりえるのです。

リノベーションのデメリット

続いて、リノベーションのデメリットについてみていきましょう。

既存利用部分の経年劣化

当然のことながら、リノベーションにはどうしても既存のまま利用する部位が存在します

リノベーションにより内装・電気・設備部分までは新しくすることができるのですが、躯体を交換することはできません。

適切な維持保全を行うことで、建物は良好な状態を保つことができると述べましたが、新築に比べて残りの寿命が短くなっている点は否めません。

躯体まで交換できるなら、それはもう建て替えるのと同じですからね。

また、躯体に埋め込まれているサッシや、土中に埋設されている配管設備も中古のまま利用することがほとんどです。

長期的にみると、新築に比べて早期に経年劣化し不具合が生じやすいという点はデメリットといえます。

プランの制約

まず、マンションにおいては大きく専有部分と共用部分に分けられますが、リノベーションで変えることができるのは専有部分のみです。

躯体、サッシ、共用の電気配線・給排水管などは原則そのままです。

なので、天井高さ・梁・柱・窓の位置は決まっていますし、水廻り(キッチン・洗面室・浴室・トイレ)の配置もパイプスペース(排水竪管)によって間取りの制約があります。

マンションのリノベーションでは希望するプランを叶えるために、一部分床に段差が生じたり、不自然な場所に梁型が出てきたり、どうしても目を瞑らなければならないケースはよくあるものです。

また、マンションには管理規約といわれる管理組合のルールブックなるものがあります。

専有部・共用部の区分や床の仕上材について遮音等級の最低基準が定められていたり、リノベーション工事を行う前に管理組合(理事長)に申請が必要だったりするのが通例ですので、必ず事前に確認をしておきましょう。

 

一方、戸建はマンションほどの制約はないものの、柱・梁・窓の配置は原則変えることができません(構造的な補強によって一部変更できるケースはあります)ので、新築よりもプランの自由度が低くなります。

ローンの金利が高くなる

もう1つ見落としがちなポイントとして、ローン利用時の金利についてです。

例えば、中古住宅を購入してリノベーションを行いたい場合、住宅ローンが使えるのは原則物件費用に対してです。

近年、リノベーション費用とセットで使えるローンや、リノベーション費用のみを対象にできる金融機関も出てきましたが、新築を購入する場合よりも金利が高くなってしまいます。

自分が理想とする立地でリノベーション済の中古物件を購入するという選択肢もありますが、その分物件価格に上載せされることになります。

新築よりはローコストで理想のプランを実現できるという、リノベーションのメリットが消えてしまうことがないよう、購入時に使えるローンの金利や支払い総額などシミュレーションをしておくことをオススメします。

さいごに

今回はリノベーションについて、今さら聞けないリフォームとの違いなどの基本的な内容や、新築と比較した時のメリット・デメリットについてなどをご紹介してきました。

中古部分があることをデメリットの1つにあげましたが…

歴史を刻んだ古いパーツが真新しい内装と融合した空間は、ノスタルジックな気分を抱かされ心地よく感じられ新築では味わえない魅力ともいえます。

リノベーションは奥が深く、今回の記事だけではとうてい伝えきれないほどの魅力があるわけですが、基本的な内容について少しでもご参考いただければ幸いです。

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